お店の個性
今発売中の関西ウォーカーに、
1年ほど前、ちょうど同時期に施工させて頂いていた2つのお店が載っていました。
1つ目は以前ブログでも紹介させて頂いた「仮)ニュー・ダイトン」さん。
もちろん「おっさん」の方で、どどんと最初のページに!
最近、大衆酒場をモチーフにした酒場が増えてる・・・という特集でしたが、
ズバリ狙い通り、たゆたゆさんの目利きはすごいなぁと思います。
そして、やっぱりキャラが濃ゆいですね。
そして、次のページには、「なんばしょっと?」さん。
こちらも、どどんと「おっさん」で!
このお店は、設計施工でお手伝いさせて頂いたのですが、
1年経って、こうやってお店も賑やかになって、とても嬉しいのです。
お店の紹介に小さく
「・・・大衆的とおしゃれなデザインがアンバランスな魅力を演出」とあるのですが、
ほんと、まさに、その微妙な感じを狙っていまして、
編集者の方、なんだかありがとうございます。
まず、場所がうらなんばということで、周りには、味があるという一言では言い表せない、
個性あふれる大小のお店がひしめいているわけです。
その個性ってきっとデザインで作り出せる類のものではなく。
その中で、爽やかな店主さんが見つけてこられた物件が、サイディング貼りの新築の木造2階建だったこと。
そして、内装のイメージは、「和風」とか「洋風」とか「レトロ」とか、どれでもなくて、
ぱっと見てどんなメニューが出てくるか想像できない方が良い、
店名についてる「?」をコンセプトにしたいという要望。
そんなお題に対して、私達はこんな方針を決めました。
・デザインしないこと
・材料・工種を絞ること
・外壁に手をつけないこと
要は、いかにコストを低く抑えながら、効果的にコンセプトを反映するか。
って書くと、ちょっとアレですが、
実際は、店主さんが、後から色塗りたくなったら好きな色に塗ったらいいし、
好きなもの飾ったらいいし、照明も家具も選んだらいいし、
後からどんどん更新できた方がいいやんね、ってだけです。
外部はシャッターの外側に、4枚の引き戸を作るだけ。
普段は、左側のみで出入り。
道路からセットバックした立地を生かして、外呑みスペースも想定していたので、
全開にもできるし、屋台のように窓だけ開ける事もできるように。
材料はツーバイ材とポリカの波板。
ガラスをはめた框戸にするとそれだけで、結構かかります。
色もつけません。
あとは、90mmのツーバイ材の奥行きが、立ち飲みの際にビールジョッキを置くのにちょうど良かったり。
ただ、ツーバイ材は反りもあるので、その反りも許容できるような作りを考えました。
吊り金具はスチールドア用の金具を応用。
ポリカの波板も既製品の幅655mmをそのまま使えるように、割付けています。
寒い冬は、ここから熱燗が出てくる?扉も。
溝ついてポリカをはめただけ(だけって言ったら、また大工さんに怒られます)。
内装も、厨房用のブロックと、ツーバイと下地材の寸三とシナベニヤだけで作りました。
カウンターは、木材にするとその材の種類や厚みがお店の印象を決めてしまうので、モルタルで。
型枠としてツーバイを使ってバラさず残しました。(バラす手間の節約)
低価格で流通して普及している材は、扱いやすくて強度もあって、基本的に良いものだと思っています。
ツーバイだって無垢なので削れるし。
あとは、最後にトイレの引き戸。
これも寸三とベニヤで作って、鎌状をスケルトンに。
彫り込む手間を節約していて、個人的にナイスアイデアなのでは!と思ったのですが、
この1年、誰も触れてくれないので、こっそり載せておきます。
こんな感じで、
コストを抑えること+「?」というコンセプト=「工事途中の現場のなんかワクワクする感じ」
なんとなくそんな雰囲気が出れば良いなと、遊ばせて頂きました。
いろんな種類のお店がありますが、
この物件は、出来た時が一番良い空間、になったら嫌だな、とそれだけは強く思っていました。
そして1年経って、雑誌をみて、
店主ご夫妻のお人柄やおそらく隠れたいろんな努力の賜物で、
あの界隈でもちょっと個性のあるお店になったのかな、と、嬉しくなったのでした。
(竣工時のお2人)
デザイナーさんや建築士さんの設計の物件に関わるのは大好きですし、
直接お客さんとやりとりして進めるのも面白いです。
物件毎に、それぞれ最適な関わり方や作り方をしていきたいなと思います。